これまで、Self-Driving Networkへの移行段階として、AIネイティブネットワークの基盤となるデータについて、それがどのようにクラウドで処理され、SLE(サービスレベル期待値)や分類子を通じてインサイトや推奨事項に変換されるのかを見てきました。ここからは、AIアシストについて見ていきましょう。これは、問題解決のためにデータに裏付けされた推奨事項を提供し、許可された場合、問題解決のための自動化されたアクションを実行することで、ネットワーク運用においてAIがより能動的な役割を果たすようになります。
このシフトは、より複雑化する環境を管理するためのAIの機能への信頼が高まっている業界のトレンドを反映したものです。IDC Researchによると、調査対象となった企業の半数近くが、AIを活用したネットワーク管理プラットフォームについて、問題の修正や最適化のアクションを自身で判断および実行するものが望ましいと答えています。
AIアシストの戦略的価値
AIアシストのアクションによって、ネットワーク運用の簡素化、IT運用チームの手作業によるワークロードの軽減、問題解決までの時間の短縮が実現し、エンドユーザーは優れたネットワークパフォーマンスを得られ、ITはより戦略的かつ革新的な取り組みに注力できます。
ネットワークの複雑さが増すにつれ、ネットワークイベントはささいな設定ミスから重大なサービス中断まで多数にのぼり、IT運用チームが重大なイベントを発見し対処することが難しくなっています。クラウドベースのAIOps(IT運用のための人工知能)を通じたAIアシストは、IT運用チームが余計な対応を減らせるようサポートします。AIOpsが優先度の高い問題を証拠と共に明示し、それらをIT運用チームの許可のもとに自動的に解決することで、IT運用チームは迅速かつ事前対応で問題に対処できます。これによりトラブルシューティングの時間を大幅に短縮でき、リソースがイノベーションや長期的計画などのより価値の高い戦略的取り組みに注力できます。
データからアクションへ:AIアシストの仕組み
高度な数学的アルゴリズムやAI(人工知能)、ML(機械学習)モデルを介して、数百ものイベントやリアルタイムのユーザーエクスペリエンスからのデータをフィルタリングすることで、明確な正当性に基づく実用的で有効な推奨事項が作成されます。
IT運用チームがその結果を信頼できる場合、その問題を自動的に解決する権限をAIOpsソリューションに付与できます。時間をかけて信頼を構築し、これらの推奨事項を信頼できるアクションのリストに追加することで、今後はIT運用チームに報告することなく、AIが同様の問題を自律的に解決できます。こうしてAIOpsはIT運用チームのメンバーの一人へと進化し、自動運転モードに入ることになります。
AIアシストのアクションは、以下の3つに分類されます。
- 最適化:RRM(無線リソース管理)やNRM(ネットワークリソース管理)などのAI/MLアルゴリズムが継続的にユーザーエクスペリエンスを最適化
- 推奨されるアクション:AIが重大な問題を特定し、証拠と共に具体的で実用的な推奨事項を提案する
- 自動化されたアクション:AIが人間の介入なしで実行する、認定されたアクションのリストにIT運用チームが追加した、信頼できる推奨事項
業界屈指のAIアシスタント、Marvisを導入
ジュニパーは、当社のAIネイティブネットワーキングプラットフォーム、Mist™の中核となるMarvis® AI Assistantによって、上記のコンセプトを実現します。MarvisはRRMやNRMなどのAI/MLアルゴリズムを活用し、継続的かつ事前対応的にユーザーエクスペリエンスを最適化します。Marvis Actionsを通じて、推奨されるアクションと自動化されたアクションの両方を提供し、これらはドライバーアシストモードと自動運転モードと呼ばれます。
ドライバーアシストモードでは、Marvisはパフォーマンスに影響を及ぼすイベントを特定し、非対応のファームウェア、ポートの設定ミス、誤ったケーブル、VLANの欠落、WAN回線の混雑といった問題に対して、証拠に基づく有効性の高い解決策を提案します。
自動運転モード(IT運用チームが信頼できるアクションのリストに推奨事項を追加した場合)では、MarvisはIT運用チームが定義したポリシーに従い、ポートの設定ミスの修正やポートのスタック問題の解決などを自律的に行うことができます。アシストによるものも自律的なものも、すべてのアクションがMarvis Actionsダッシュボードで記録および検証されます。これにより、チームは重大な問題や推奨された解決策の概要をリアルタイムで確認でき、人間主導のアクションと自律的アクションの両方を高い透明性と制御のもとで追跡できます。
Marvisの実例:実際の成果
世界中のお客様がMarvis Actionsのメリットを実感しています。例えば、あるIOTM(医療分野におけるIoT)の大企業では、インドのサイトで一年以上にわたってZoomユーザーに関する断続的な問題が発生していました。MarvisのLEM(大規模エクスペリエンスモデル)からの推奨事項を活用することで、オーストラリアのサイトにパケットを送信し、遅延とジッターを引き起こしていたVPNゲートウェイの設定ミスを速やかに特定できました。
別の事例では、ある大手小売業者が店内の特定のエリアでのパフォーマンス低下に悩まされていました。Marvisは、この問題の原因は無線のデモ機の電波干渉であることを突き止めると、自動的にチャネル帯域幅を40 MHzから20 MHzに修正し、店内ネットワークパフォーマンスを従業員とお客様双方にとって最適化しました。
自律化への次のステップ
Marvisによって、IT運用チームはインサイトだけでなく、チームに貴重なメンバーを追加できます。重大な問題の優先順位付け、解決策の提案と実行、そしてそれらの解決策が正しく実装されたことを確認できるメンバーです。こうしたアシスト機能が完全な自律型の重要な基盤を提供することで、IT運用チームは定型業務を徐々にAIに移行し、パフォーマンスと効率の向上を実現できます。同じく重要なのは、IT運用チームが貴重な時間をトラブルシューティングに費やす代わりに、イノベーションの推進など、より影響力のある取り組みに費やすことができることです。
第4段階は転換点です。AIはもはや提案するだけでなく、アクションを実行するようになりました。最終回となる次のブログでは、Self-Driving Networkへの移行の最終段階、AIが運用をサポートするだけでなく管理もする段階について見ていきます。また、ジュニパーがMarvis Minis、大規模エクスペリエンスモデル、エージェント型AIを活用して、どのように自動運転への移行をリードするかについても紹介します。
ジュニパーは、AIネットワーキングのどの段階にいるお客様でも、次の段階への移行をサポートします。
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