前回の投稿記事では、Self-Driving Network™への移行の第1段階、すなわち、データについて説明しました。データはインテリジェントなネットワークに欠かせない基盤です。しかし、データだけでは問題は解決しません。第2段階では、数理学とデータサイエンスを適用してデータから真の価値を取り出します。すなわち、未加工の情報から、ネットワークの管理方法を変える精度の高い実用的なインサイトへと変換します。
インサイトの価値
従来のトラブルシューティングでは、暗号のようなCLIコマンド、ログファイル、手作業で操作するチェック用デバイスなどを用いて調査を行います。これは事後対応で行うプロセスであり、時間もかかりフラストレーションもたまります。IT運用チームは遅れを取り戻そうと躍起になりますが、問題が解決されるのは、ユーザーが問題を報告した後に限られます。1つの問題点を探し出すのは、干し草の中から1本の針を見つけるようなものです。考えられる原因は無数にあるからです。
AIネイティブのインサイトを利用すれば、こうした当て推量の作業をする必要がなくなります。IT運用チームは、ログやコマンドライン出力を基に探し回る代わりに、ユーザーが気づく前に問題を検知して解決できます。適切なデータインサイトが事前に問題を明らかにするため、「火消し作業」に追われるフラストレーションや絶え間なく続くトラブルシューティング作業から解放されます。
実際のインパクト
AIおよびAIが提供するインサイトに対する信用と信頼を得るためには、IT運用チームがその目で見て信じる必要があるかもしれません。私のお気に入りの事例は、ある懐疑的なITマネージャーとPoC(概念実証)で一緒に作業したときのことです。そのITマネージャーは、Juniper Mist AI™が本当にネットワーク管理の役に立つのか、自分たちが気づかなかった問題を検出できるのかと疑っていました。PoCの間、デバイスを接続できたのは、ジュニパーのネットワークではなく他社のネットワークでした。幸いなことに、データインサイトによって、Mist以外のルーターにMTU(最大送信単位)の設定ミスがあり、認証パケットの通過を妨げていたことを当社は発見できました。
別のケースでは、Mist AIがある従業員のデスクにあるイーサネットケーブルの障害を検知しました。この問題は誰も報告していませんでした。当初、IT運用チームはこのアラートを真剣に受け止めませんでした。しかし、IT運用チームがその従業員に確認を取ると、その従業員は有線ネットワークが信頼できないという理由で、ひそかにWi-Fiに切り替えていたことが判明しました。Mist AIは、IT運用チームが発見できなかった問題を表面化しました。
最初は懐疑的だったITマネージャーは、Mist AIがこうした問題や他の問題を正確に特定するのを見て、信頼を置くようになりました。
このような細かい可視化によって、さまざまな業界でIT運用の変革が進んでいます。Gap Inc.などの小売企業は現在では、ネットワーク正常性に対して詳細なインサイトを得るようにしており、これによって障害対応チケットを最大90%削減できています。「今では、データを細分化して、特定の店舗で問題が発生していることを明確に把握することができます」と、Gap Inc.のグローバルネットワークアーキテクトであるスネハル・パテル氏は述べています。店舗レベルでインサイトを得ることで、IT運用チームは迅速に対応することが可能になり、従業員とお客様にシームレスな接続を提供できるようになっています。
高等教育機関も多大なメリットを見出しています。ダートマス大学では、Mist AIによってキャンパスのすべてのユーザーが優れたエクスペリエンスを享受できるようになりました。「問題に遭遇しているユーザーが全体のわずか2%であっても、その問題を即座に解決できます」と、ダートマス大学のCIO、ミッチ・デイビス氏は述べています。AIネイティブのインサイトを活用することで、IT運用チームは広範囲にわたる苦情が寄せられるのを待っている必要はなくなりました。事前対応で問題を特定して対応できるため、学生やスタッフに一貫した高品質のエクスペリエンスを提供できます。
Mist AIのインサイトは、可視化のみならず、組織にとってますます大きな課題になりつつあるITスキルギャップの解消にも役立ちます。例えば、Rady小児病院では、AIによってネットワーク管理の敷居を低くする取り組みを続けています。「経験豊富なエンジニアに、関係性の薄いメトリックを集めて解釈してもらう必要がなくなりました。今では、AからBまで問題を直接見通すことができるようになりました」と、Rady小児病院のネットワークエンジニアチームのリーダー、ダニエル・マディン氏は述べています。こうした転換によって、スキルの高いエンジニアはイノベーションや戦略的なプロジェクトに集中できるようになり、まだ経験の少ないスタッフは日常的な運用を自信をもって管理できるようになりました。IT運用チームに大きく負荷がかかっていた頃であれば、この能力は特に貴重です。
移行の続き
インサイトの獲得によって状況は一変し、IT運用チームはこれまで以上に迅速かつ効率的に問題を解決できるようになります。しかし、次の段階に進み、インサイトを推奨事項に変換すると、さらに大きな可能性が開けます。次回の投稿では、AIネイティブの推奨事項がどのようにして事前対応のネットワーク管理を実現し、真のSelf-Driving Networkへ私たちを近づけていくのかについて説明します。
お客様の組織は、Self-Driving Networkへの移行プロセスのどの段階にありますか? どの段階にあっても、ジュニパーは、お客様の次のステップをサポートします。
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