レースに勝つFormula One™マシンを作るには、チームは多数の選択肢を慎重に検討する必要に迫られます。たとえば適切なエンジンの選択はその1つですが、それだけではありません。シャーシの設計、熱システム、タイヤなど、あらゆるものを注意深く検討します。最高のパフォーマンスを実現するには、これらの各コンポーネントについて適切なものを揃えて、バランスを取る必要があります。
ジュニパーネットワークスはレーシングカーを作っていませんが、高性能なF1マシンの設計と高性能なルーティングプラットフォームの設計には多くの類似点があります。本日の発表のように、ジュニパーは持続可能なビジネス成長のために設計された新世代のCloud Metroソリューションによって、従来の「レトロなメトロ」ネットワークの再考を進めています。その皮切りとなるのが新たに機能を強化したACX7000シリーズで、遠い将来を見据えて、持続可能なパフォーマンスと電力消費、スケーラビリティを実現するように構築されています。
パワーアップしたCloud Metro ACX7000シリーズポートフォリオは、最新世代の転送ASICs、パワーイノベーション、独自のシャーシ設計などが組み合わされています。同様に重要なのは、今日のメトロの需要に対応する密度とスケーラビリティの適切なバランスを実現した上で、さらに十分な成長の余地があることです。以下がその結果です。
- 最も柔軟性の高いポートオプション、1/10/25/40/50/100/200/400 GEをサポート
- 高いタイミング精度(Class-D)[1]、EANTCによる検証済み
- 競合製品よりも最大77%少ない消費電力、71%低い総所有コスト、4~7年長いシステム寿命[2]
このすべてが組み合わされて、新しいCloud Metroに向けた、現在、そして将来においても業界をリードする最も持続可能で高性能なネットワークシステムとなります。
バランスを生み出すための設計
レーシングカーとネットワークシステムを調べてみると、設計に多くの類似点が見つかります。たとえば、F1マシンのライバル同士が、同じメーカーのエンジンとタイヤを使用していることがよくあります。F1レースの統括団体FIAは、レースに参加するすべてのチームが準拠すべき標準を定めています。同様に、さまざまな企業のメトロネットワークシステムは、同じASICs、プラガブル光インターフェイス、コネクターを使用でき、IETF、ITU、IEEEが制定しているIP、MPLS、イーサネットの同じプロトコル標準に準拠する必要があります。レースの場合と同様に、共通するコンポーネントを使用し、同じ標準に準拠していても、結果はチームごとに大きく異なります。その違いはどこにあるのでしょう? 一部のチームは、これらのコンポーネントを最大限に生かすために、より適切な設計上の選択を行っています。
つまりバランスです。ときには、あるパラメータの値を上げると、関連する別のパラメータに正反対の影響を与えます。ハイパワー光インターフェイスを使用して最高のスループットパフォーマンスを得たい場合、高度な冷却が必要になります。それでは、ポート密度が制限されてしまう可能性があります。さらに冷却を改善しようとすると、ラインカードスロットのピッチが広がり、エアフローとヒートシンク用の面積が広くなるため、高さと奥行に特定の制限がある場合に、システムのポート密度が実質的に低下するおそれがあります。最高密度が必要ならば、そのためには電力要件をコントロールする必要があります。持続可能なシステムを構築するには、こうしたトレードオフの舵取りをうまく行い、すべての設計要素のバランスを可能な限り最適にする必要があるのです。
ジュニパーでは、ACX7000ファミリーの新しいポートフォリオでまさにそれを実現しました。長年培ってきたシステム設計のノウハウを生かし、さまざまなCloud Metroの場所や要件に合わせてプラットフォームのポートフォリオ全体が最適化されるように、最適なバランスで組み合わせたのです。
メトロネットワークシステムハードウェアの再開発
ジュニパーがいかにしてCloud Metroポートフォリオで他社製品とこれほどの差を生み出すことができたのか、疑問に思われるかもしれません。大きな要因の1つは、画期的なハードウェアのイノベーションです。
ACX7500シリーズモジュラー型アグリゲーションプラットフォームは、お客様のネットワークにTCOの大きなメリットをもたらします。ジュニパーの輝かしいルーティングの歴史を生かした新しいルーターは、一元化された転送とシンプルなインターフェイスモジュールを兼ね備えています。現在販売されているACX7509は、Cloud Metroに応じた最適なバランスで電力、パフォーマンス、価格、スペースの完璧な組み合わせを実現しています。ACX7509とよく似た競合製品と比較した結果は、次のとおりです。
- 消費電力の低減によりOpExが低下:ACX7509の電力効率は、競合製品よりも優れており、ポート密度と冗長性が同程度の競合プラットフォームと比較した場合、消費電力が70%も低減しています。消費電力の低減によってお客様のOpExや利益の浪費が減少し、将来的には地球の持続可能性が向上します。これが次世代Cloud Metroソリューションのメリットです。
- 設備投資の低減:各ラインカードで分散して転送を実行するシステムよりも、一元化されたプラットフォームの方がコストは低下するものです。一元化されたシステムの方がシンプルで、少ないチップでも同じことを実行できるためです。ACX7509は、最新のシリコンを一元化された転送エンジンに搭載しており、競合製品の半分の設備投資で高いパフォーマンスを発揮し、同様のポート密度を実現します。ACX7509は、お客様のコストを削減すると同時に、地球にも優しいのです。
- 高さと奥行の縮小:ACX7509の高さはわずか5RU、奥行は600mmであり、競合製品よりもスペースの効率性に優れています。競合製品は7RU以上、ラックの奥行は800mmを超えています。コロケーションプロバイダではラック内のスペースと消費電力に応じて料金を請求しますが、ACX7509は同じ密度とサービスを競合製品よりも狭いスペースと少ない電力で提供するため、お客様はコストを削減できます。
- 可用性の向上:ACX7509は転送が一元化された設計であるためコンポーネントが少なく、このため設計によりMTBF(平均故障間隔)が向上します。オプションですが、RE(ルーティングエンジン)用とPFE(パケット転送エンジン)用に分けて完全冗長化すると、ACX7509には設計上の単一障害点がなくなります。
- 柔軟性の向上:ACX7509は競合製品よりも高さが低くて奥行が浅い以外に、高い柔軟性も備えています。競合製品はスロットがわずか4つなのに対し、ACX7509はモジュラー型のインターフェイスベイが9つあり、現在は1Gから400Gまでのすべてをサポートし、将来的には800G以上にまで拡張可能です。
当社の固定システムプラットフォームのCloud Metro向けアクセスとアグリゲーションのオプションは、小規模でコンパクトであっても同様に優れています。最良のものは小型という場合があります。
- ACX7000シリーズは、Cloud Metroを導入する場合に最適なアクセスレイヤーです。ACX7024(現在発注可能)は、5Gに最適化されたCSR(セルサイトルーター)に関する新たな基準を打ち立てました。高精度なClass Dタイミングのサポート、EVPNによるSR/SRv6などの次世代転送オプション、1G、10G、25G、100Gポートオプションをはじめとしたインターフェイスのサポートを提供します。5G xHaulがこれほどサポートされたことは、今までありませんでした。
- ACX7100シリーズ(現在発売中)は、必要とされるポートインターフェイスに応じてアグリゲーションでもアクセスでも同様に、分散型Cloud Metro IPサービスファブリック用のスパインとリーフ両方の柔軟なオプションになります。
- ACX7100-48Lには、製品カテゴリ中トップクラスのポート速度オプションが用意され、必要な容量の増加に応じて拡張できます。48ポートすべてが10G、25G、50Gインターフェイスを同時にサポートする能力を備え、要求の厳しい5G xHaulやケーブルR-PHYアグリゲーションの帯域幅ニーズ、あるいはCloud Metroの深部の分散型エッジコンピューティングノードからの高速NICに対するローカル接続ニーズも満たします。400Gの6ポートとノンブロッキングアップリンク用のQSFP-DD光インターフェイスがこれを補い、さまざまな光インターフェイスを選択して100Gから400Gまで簡単に拡張して、各ポートで400G ZR/ZR+/XRをサポートできます。
- ACX7100-32Cは、業界で唯一100G QSFP28ポートを32個備えていて、各ポートすべてが100G ZR光インターフェイスを同時にサポートします。さらに400Gの4ポートはZR/ZR+/XRをサポートします。競合製品は、どの場合でも100G ZR光インターフェイスをサポートできるのは半数のポートのみです。ニーズがないからといって妥協する必要はありません。ジュニパーのACX7100シリーズは、現在でも、将来の持続可能な拡張をリードしています。
- ACX7348(2023年上半期に発注可能となる予定)は、ルーターの設計を強化してマルチサービスアプリケーションに対応します。固定冗長プラットフォームの長所と3つのモジュラー型ベイを組み合わせて、成長に応じてカスタマイズできるスケーラビリティ、高い可用性、優れたパフォーマンスを提供します。
ACX7000シリーズの特長の1つは一貫性です。ジュニパーは、ポートフォリオ全体でソフトウェアが同一で、Junos Evolved OSをベースにするようにポートフォリオを開発しました。その理由は、Junos Evolved OSが、運用の拡張、シンプルさ、スケーラビリティを実現するための市場をリードするモジュラー型オペレーティングシステムである点です。新機能を開発すると即座に、小型の固定ボックスから大型のモジュラー型分散プラットフォームまで、ACX7000シリーズプラットフォームの全製品で使用できるようになります。
ジュニパーのACX7000シリーズCloud Metroプラットフォームは、最適なバランスを実現したパイプライン処理ベースの最新世代シリコンを使用しており、スループットとレイテンシを最大限に高め、消費電力とビットあたりのコストを削減します。この拡張可能な最新のシリコンシリーズは、機能とスケーラビリティの点で飛躍的に向上しており、競合システムとの差を広げています。競合製品のほとんどは、スケーラビリティと機能が制限される旧式のシリコンをまだ使用していて、一世代遅れています。これらの先を見越したシリコンの選択が、遠い将来までCloud Metroへの投資を保護します。こういったシリコンを、Cloud Metroポートフォリオ全体にエンドツーエンドで提供することも同様に重要です。サービスプロバイダに優れたオプションが提供され、さまざまなスループット、パフォーマンス、サービスの規模、物理サイズ、温度耐性の強化、冗長性に対応できます。1つや2つのタイプのサイトだけでなく、すべての新しいCloud Metroロケーションで最新のシリコン機能を利用することができます。
これはACX7000シリーズが、前世代のシリコンから繰り越されたスケーラビリティの限界という負担から解放されたことも意味します。結果的にジュニパーのACX7000シリーズは、次世代Cloud Metroアーキテクチャにおける分散サービスデリバリーに対して、論理的な高いスケーラビリティに関する新たな基準を打ち立てました。
革新的ソフトウェア
ハードウェアの設計は大きな違いを生みますが、高性能のレーシングカーにおいても、ソフトウェアの存在は同じく重要です。最新のFormula One™マシンには、統合されたセキュリティ機能と高度なセンサーシステムが搭載されており、車両の性能を継続的に監視し、最適化します。同様に、ジュニパーのACX7000シリーズには新しい革新的なソフトウェアが使用されており、これによって、メトロネットワークシステムとアーキテクチャを保護し、運用を自動化し、ソリューションパフォーマンスの継続的な分析、最適化を行います。以下のサービスを提供しています。
- 組み込みのゼロトラストセキュリティ:Cloud Metroプラットフォームには、ゼロトラストセキュリティが組み込まれています。製造時に、すべてのACX7000シリーズプラットフォームに一意のデバイスIDが暗号によって関連付けられます。また、サービスプロバイダはデバイスのハードウェアとソフトウェアが改ざんされていないことを自動で検証できます。Cloud Metroプラットフォームにはデータのセキュリティという特長もあります。たとえばネイティブファイルを暗号化して保存時に保護し、すべてのポートでMACsecを使用して移動中のデータを保護します(詳細については、こちらのブログを参照)。
- 組み込みのActive Assurance:今後の差別化されたCloud Metroサービスは、速度やフィードではなく、エクスペリエンスの質で測定されます。そのため、Cloud Metroはエクスペリエンスファーストのネットワーキングを考えて構築されています。 現在は、Paragon Active Assuranceテストエージェントが各ACX7000プラットフォームのJunos OS Evolvedにネイティブに組み込まれています。当社は、メトロネットワーク自体を変えて、ユーザーエクスペリエンスを能動的に測定し、先を見越して対応する「センサー」にしました(詳細については、こちらのブログを参照)。
- ピアレスモデル駆動型管理:すべてのCloud Metroプラットフォームは、デバイス管理に関する次世代の原則とクローズドループ自動化に関するインスツルメンテーションをベースにしています。各ACX7000プラットフォームは、モデル駆動型構成とスタンダードベースのOpenConfigに基づいたテレメトリを、gNMI(gRPCベースのネットワーク管理インターフェイス)とgNOI(gRPCベースのネットワーク運用インターフェイス)に準拠した、システムに対する主要な管理インターフェイスとして使用しています。
- AIに対応した自動化:持続可能なシステムのメリットは、温室効果ガス排出量を削減し、投資を保護するだけではありません。ITチームの運用を楽にして、より高い価値のイノベーションに集中し、エンドユーザーとオペレーターに同様の優れたエクスペリエンスを提供することも可能です。サービスプロバイダの手助けができるように、ジュニパーのCloud Metroポートフォリオは、ジュニパーの実績あるAIOpsテクノロジーによってサポートされ、Paragon™ Automation as a Serviceを使用してクラウドから提供されています。
ハードウェアやパワーのイノベーションと同様、これらの機能はポートフォリオの一部のフォームファクターだけのものではありません。これらはACX7000シリーズのすべてのプラットフォームに適用されているため、すべてのメトロロケーションにセキュリティ、アシュアランス、自動化が埋め込まれます。
将来に備えた構成
F1マシンの構築でも、ネットワークポートフォリオの構築でも、成功を収める最適な設計には常にバランスが必要ですが、ジュニパーでは、次のレースだけでなく次の10年を見据えて設計の選択を行い、バランスを取っています。
貴社は現在、すべてのポートに最高性能の光インターフェイスを使用する必要がなく、Class-Dのタイミング精度も必要としないかもしれません。しかし数年後に処理するメトロトラフィックが500%増加したり[3]、新しい超低遅延のサービスを提供したりする頃には、貴社のCloud Metroはすでにその準備を整えているのです。包括的なポートフォリオ、最先端のシステム設計、業界で最も柔軟なインターフェイスオプションを備えた本シリーズは、必要なときに必要な場所に容量を追加して、状況に合わせたペースで成長させることができます。人、地球、そして貴社の利益のために、より持続可能なメトロとビジネスの構築が可能となるのです。
[1] EANTC: https://eantc.de/fileadmin/eantc/downloads/events/2022/EANTC-InteropTest2022-TestReport.pdf (ACX7100-32C and ACX7100-48L were tested)
[2] ACG Research: https://www.juniper.net/content/dam/www/assets/white-papers/us/en/2022/acg-research-the-tco-and-environmental-benefits-of-juniper-cloud-metro-network-solutions.pdf (ACX7509 was used in this study)
[3] ACG Research, https://acgcc.com/reports/next-generation-cloud-metro-network-requirements-a/
製品の方向性に関する記述
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