AIウォッシングとは簡単に言えば、企業や組織がその製品、サービス、運用を実際よりも革新的であるか、あるいは技術的に高度であるかのように見せようとして、AI(人工知能)を採用していると誇張または見せかけの主張をすることです。そうする理由はさまざまです。たとえば投資を促すため、株価を上げるため、製品をより魅力的に見せるため、競争上の優位性を得るためなどです。
AIウォッシングは、実際には単純なアルゴリズムしか使用していないか、そういったものをまったく使用していないにもかかわらず、ML(機械学習)やディープラーニングなどのAI機能を活用していると示唆するため、顧客、投資家、市場をミスリードするおそれがあります。これは透明性と真実性の問題であり、商慣行におけるテクノロジー利用の倫理的な表明について疑念を生じさせる原因となっています。
なぜ今、このようなことが起こっているかといえば、「お金を追いかけるため」といわれています。AIを採用していると受け取られるだけでも、新たな投資、新たなビジネス、企業価値の向上に拍車がかかります。AI関連の投資が持つ魅力や評価の高まりが、テクノロジーのブランドイメージを急いで変えようと企業を駆り立てており、誤解を招くような主張が市場で蔓延する原因となっています。
AIウォッシングに惑わされない
幸いにも、AIウォッシングは何もないところから発生しているわけではありません。SEC(米国証券取引委員会)のゲイリー・ゲンスラー委員長は、AIウォッシングや見せかけだけの主張を行わないよう各企業に警告しており、AIアセットがポートフォリオに含まれていると主張しておきながら、実際にはそうではない場合、その企業の資金凍結もありうるとほのめかしています。これに負けじと、FTC(連邦取引委員会)も、AIに関する見せかけの主張には注意を払っており、必要に応じて調査を実施すると述べています。
こうした警告にもかかわらず、AIウォッシングは相変わらず、ネットワーキング業界において猛烈なペースで広がっています。ベンダーは自社のソリューションを「AI対応」、「AI採用」、「AIドリブン」などと宣伝していますが、その大部分は純粋なAI機能が提供されるものとはほど遠い状況です。要するに、AIのメリットを実現するために必要な堅牢性にも成熟さにも欠けています。
本物とそうではないものを見分ける
IT運用チームとネットワーキングチームは、成熟したITのためのAI(AIOps)というテクノロジーを活用することで、エラーを減らし、運用を効率化し、信頼性に優れた安全なエクスペリエンスをエンドユーザーに提供できます。では、名前だけのAIソリューションと、IT部門やエンドユーザーに純粋にメリットをもたらすAIソリューションとを区別するには、どうすればよいでしょうか。
まず、AIが真新しいテクノロジーではないということを忘れないことが大切です。自社の分野にAIを適用することに本当に熱心な企業は、数年かけて実際に活用しているはずです。対象ベンダーを数社に絞り込んだら、技術および運用に関して基本的ないくつかの質問を行い、回答をもらうことが不可欠です。デューデリジェンスや調達活動への取り組みと同様、回答の詳細度から重要な知見を得ることができます。回答を理解するうえで、ある程度の技術的な解釈が必要になるかもしれませんが、ベンダーの主張が妥当なものであることを確認するうえで、このようなヒアリングを推奨します。
確認しておくべきいくつかの重要な質問事項を、以下に示します。
- そのAIOpsソリューションはネットワーク全体でユーザーエクスペリエンスを予測できるか?
- そのベンダーのカスタマーサポートチームは自社のAIOpsソリューションを使用しているのか?
- そのベンダーのデータサイエンスチームとカスタマーサポートチームは連携しているか?
- AIOpsによってサポートチケットの件数が減り、ユーザーエクスペリエンスが向上したという顧客事例が、そのベンダーにあるか?
- そのAIOpsソリューションは、サービスを混乱させることなく頻繁かつ迅速な製品公開に対応できるマイクロサービスクラウドアーキテクチャによってサポートされているか?
これに加えて、AIOpsソリューションを評価する際には、以下の重要な3つの要素を考慮する必要があります。
適切なデータ:優れたワインは適切な葡萄から生まれるように、優れたAIは適切なデータから生まれます。適切な回答を得るには、適切なデータ(量と質の両方)が必要です。適切なデータがなければ、AIが返す回答は効果と正確性に欠けます。「説明可能な」AIは、データがどのように利用されているかに関してインサイトを提供し、その出力が正しいことを立証します。
リアルタイムでの適切な応答:適切なデータとデータサイエンスアルゴリズムが使用されている場合には、成熟したAIはリアルタイムで適切に応答します。ネットワークの問題を解決するよう絶えずプレッシャーにさらされているIT運用チームからすると、AIウォッシングが行われていたソリューションに起因する応答の遅延や誤検出が、生産性の低下やAIへの投資の取り消しといった意図しない結果をもたらします。
適切なインフラストラクチャ:リアルタイムで問題を解決でき、ユーザーエクスペリエンスを正確に予測可能な大規模なディープラーニングモデルを実行できるAIOpsソリューションを構築するには、適切なクラウドネイティブのアーキテクチャが必要です。AIソリューションがクラウドで構築されていない場合、ビジネスの拡大に応じてソリューションを拡大することはできないでしょう。
真のAIの実現に基づいて構築されたJuniper Mist
2015年以来、ジュニパーのMist AI™エンジンは、人間のIT分野のエキスパートと同等またはそれより速くネットワークを導入および運用でき、世界中のお客様にエクスペリエンスファーストネットワーキングを推進できるよう、AI、ML、データサイエンスの各技術を組み合わせて利用してきました。たとえば、ServiceNowはMist AIを利用して、ネットワークの障害対応チケットを90%削減しました。衣料メーカーのGapは、ITの問題を自社で解決するためにMist AIを利用し、店舗への人員派遣を85%削減できました。
ジュニパーは、業界初のAIネイティブネットワーキングプラットフォームによりポートフォリオ全体にAIを拡張することで、エンドユーザーと運用担当者のために最高のエクスペリエンスを確保し、ネットワークのあらゆる領域にわたりエンドツーエンドで運用を簡素化する取り組みを進めています。
AIネイティブとは何であり、AIウォッシングという誇大広告の壁を突き破るとはどういうことか、その詳細については、ジュニパーのCEOであるラミ・ラヒムのこちらの最新のブログ投稿をご覧ください。また、先日開催されたジュニパーのバーチャルイベント「AI-Native Now」のオンデマンド配信もぜひご覧ください。