各企業の IT 組織やネットワーク プロバイダは、何年もの間、自動化への取り組みを続けてきましたが、ここ数十年間における API やツールなどの自動化技術の進化、あらゆる要素のソフトウェア デファインド化、NetOps チームを支援する DevOps エンジニアリングの変革にも関わらず、大部分のネットワークおよびセキュリティの運用は引き続きマニュアルで行われています。それ自体は、興味深い状況です。しかし、IT の主要な技術の進歩がすべて、実質的には運用の変革に焦点を当ててきたものであることを考えると、実際の導入例の少なさは非常に憂慮すべき状況です。より効率的な運用には多くの依存関係があり、自動化は「あるとよい」ものから、必要不可欠な基本的な構成要素になりました。
これを念頭に、ジュニパーネットワークスは、現在のネットワーク自動化の状況をまとめ、業界が自動化の進んだ将来のあるべき姿に向けて準備できるよう支援することにしました。
このレポートについて
ジュニパーの 2019 年度、State of Network Automation Report(SoNAR)は、ジュニパーネットワークスが後援する年次調査の第 1 版です。私たちは客観的な測定と報告を通じて、業界にガイダンスを提供し、ネットワーク チームが運用の自動化に成功できるよう支援することを目指しています。
この調査は、400 名の北米在住の IT 関連意思決定者を対象に行いました。回答者の役割の中には、ネットワーク アーキテクチャや設計、エンジニアリング、運用、システムやセキュリティの管理などが含まれます。主な調査の目的は以下のとおりです。
- 今日のネットワーク自動化の導入状況に対する洞察(ビジネス上の要因、技術的要因を含む)を提供する
- 自動化の導入において認識できるメリットと課題を特定する
- 自動化が組織と個人のパフォーマンスに与える影響を理解する
- ネットワーク運用の現状、およびネットワーク システムとその運用の自動化の現状を見極める
誰もが自動化に取り組むが、達成者は少数
回答を得た企業において、自動化手法の確立にどの程度の期間取り組んできたかを調査しました。まったく自動化されていないと認識している企業は 4% 未満で、この結果には勇気づけられました。しかし残り 96% のうち、4 年以上前から自動化に取り組んでいると回答したのはわずか 8% でした。これはすなわち、多くの企業がまだ初期段階にあるということです。
驚くことではありませんが、これはまた、この業界で力を発揮すべきネットワーク エンジニアも同様に初期段階にあるということです。企業がより成熟した自動化手法を採用するにつれ、管理上の観点から、ネットワーク エンジニアの役割も変化するでしょう。
ここ 20 年間は、ベンダー独自の構文と認定により定義されてきましたが、今後 20 年間は、ポリシーと制御のより抽象的な表現と、その意図が基本的な動作にどのように変換されるかをシステムレベルで理解することによって定義されるでしょう。これにより、業界はデバイスからワークフローに、CLI からソフトウェアにシフトしていきます。
その結果、ネットワーク プロフェッショナルからソフトウェア開発者への転換が進むだろうと見る人たちもいますが、さらにはベンダー エンジニアからネットワーク エンジニアへの転換が進むかもしれません。この転換は既に起きているようです。始めはサイト信頼性エンジニアの役割を持つ Google によって広く知られるようになりましたが、現在ではネットワークにおける同等の役割を持つネットワーク信頼性エンジニアが業界全体で必要とされ始めています。またこれは、信頼性のために自動化し、それに付随して高速化や効率化、その他のメリットを得るという業界の方向転換でもあります。
トップ企業とその他の企業の間に広がるギャップ
2019 年度 SoNAR レポートにおいて私たちは、自動化と組織、チーム、個人ごとのパフォーマンスの高さの間には相関関係があることを発見しました。驚くべきことではありませんが、是非知っておくべきことは、ビジネス上のメリットは最も優れた企業が最も多く得られるということです。
対象者には、各種ネットワークがどの程度自動化されているかを質問しました。その結果、以下のことが分かりました。
- 平均で 40% 以上が自動化されていると答えた人のうち、78% がビジネス目標(新製品の市場投入までの時間短縮、主要製品の相対的市場シェアの拡大、顧客の増加)を達成している。
- 平均で 50% 以上が自動化されていると答えた人のうち、96% がネットワーク製品またはサービスの品質に関する目標を達成している。
これは、熟練の実践者が数値を押し上げているわけではありません。自動化の経験が少ない同業他社よりも素早く対応したことが数値を押し上げているのです。これはすなわち、他より一歩先を行く企業と、まだあまり参入していない企業との競争上の差は大きく、さらに大きくなっていることを示しています。
推進要素を理解する
これまで、自動化のビジネス ケースの中心には、コスト(運用経費や従業員数の削減)がありました。SoNAR の調査結果はこの考え方に疑問を投げかけ、技術に依存し、技術によって定義される製品やサービス、顧客体験で構成される今日のビジネスの世界では、それが旧態依然とした考えであることを示しました。
今日の最も重要なビジネス推進要因は何でしょうか?回答者の 60% が「俊敏性」をトップにあげ、さらに回答者の 1/3 が「自動化により俊敏性が最も向上した」と答えました。最後にあげられたものはIT サービス提供の効率でした。つまり、自動化の推進においてコストが重要だった時代は過ぎ去ったのです。自動化とは、ビジネスをサービスとして提供することです。
技術的側面から見ると、驚くべきことに、自動化の重要な推進要素はセキュリティで、67% がそのように回答しました。セキュリティと、その次に重要な推進要素との差はなんと 12% も開いています。これについては今後ブログでご紹介します。では最も評価の低かった技術的な推進要素は何でしょうか?スタッフの人数に対するスケール効率です。再度確認しておきますが、今回焦点を当てるのは成果を推進することであり、人員削減ではありません。
自動化に移行するには、短期的な追加投資が必要です。つまり、コストは下がる前に一度上がります。自動化の価値はコストを抑えることではなく、拡張可能な方法で成長を加速させることです。
取り組みと進化への集中が体験以上に良い結果を生み出す
回答者には、自社の自動化手法についての主観的な自己評価を依頼しました。
- 評価中(16%): GUI または CLI 以上の運用経験なし(わずか 4%)、ツールやスクリプトによる自動化を開始したばかり(12%)。
- 自動化実践中(31%):テスト、開発、またはラボ環境は自動化したが、本番環境ネットワークはまだ自動化していない。
- 本番環境自動化済み(36%):本番ネットワーク環境は自動化したが、まだすべての場所を自動化していない。たとえば、データセンター ネットワークの一部を自動化していても、すべては自動化していないなど。また、WAN やデータセンターなど一部の領域を自動化していても、キャンパスや支社ネットワークなど一部の領域は自動化していないなど。
- 広範囲に自動化済み(17%):ネットワーク内のすべての本番環境を自動化済み。
これらのグループのうち、「広範囲に自動化済み」のグループは長期間にわたって自動化を進めてきました(4 年以上にわたって自動化を進めてきた企業はこの3倍存在します)。しかしこの調査では、「本番環境自動化済み」(ネットワークの一部のみを自動化)が「広範囲に自動化済み」より、ビジネス目標のパフォーマンス向上など、いくつかの主要カテゴリーにおいて、より優れた結果を出していることが分かりました。
パフォーマンスの最良の指標は、ネットワークが自動化されている度合いです。これは、回答者が広範囲に自動化済みと回答していることや、自動化にどの程度時間がかかったかよりも重要です。これは直感的に分かりにくいかもしれませんが、Blackberry などの強力な自動化された NetOps を使用するジュニパーのお客様の多くは、人材の育成やプロセス、インフラストラクチャのより小さな側面の技術に労力を集中して、さらに深く注力するようになっています。そこから、成功を再現できます。一部のワークフローをスクリプト化するなどの大まかな自動化は何もやらないよりは良いことですが、労力を一点に集中した方が、平均的には、より広範囲で表面的な自動化よりも優れた結果を生み出します。
自動化と NetOps の形
回答者の 96% が既に自動化を開始したと回答していますが、十分に自動化がなされた企業に関して、大企業の数は中小企業の 2 倍となっています。これは、より多くのリソースを持ち、運用をより高度なものに拡張する必要がある企業ほど、自動化という目標を達成する意思が強かったり、実行する能力が高いという事実に裏付けられています。
ネットワーク内のさまざまな領域のうち、データセンター ネットワークが最も自動化が進んでおり、回答者の 43% が自動化が進んでいると回答しています。またデータセンター ネットワークは、自動化が不十分な企業が多くの時間を費やす領域である一方、十分に自動化された企業はキャンパスや支社に対して多くの時間を費やしています。
ネットワーク エンジニアは、どんな作業に最も多くの時間を費やしているのでしょうか?71% が、日々の作業と回答しています。一方、プロビジョニングに時間を費やしていると回答したのはわずか 32% で、プロビジョニングと設定は彼らの中で最も優先度の低いものになっています。
ネットワーク自動化の現状を考えたとき、しばしば、Ansible、Puppet、Chef などの設定管理ツールが話題の中心として取り上げられるのは興味深いことです。これは、プロビジョニングの大部分が既に解決されていることを示している可能性があります。一方で、企業は、悪名高く信頼性の低いインフラストラクチャに変更を加えることを恐れており、変更を加えるよりも、代わりに変更管理手段を実行することに多くの時間を費やしている可能性を示唆しています。業界が設定管理に重点を置くことで有利な立場を維持できるかどうかは疑問です。
自動化と個人
当社の調査では、自動化初心者と自己評価する回答者のうち、50% を超える人たちが、以下の重要な障壁を指摘しています。
- 業務中に学習する時間が不足している(59%)
- トレーニングを受講するための必要な知識(前提知識)が不足している(52%)
- 本番環境でミスを犯すことに対する恐れ(50%)
- トレーニング リソースが不足している(56%)
自動化に向けて業界を前進させるためには、まずこれらの障壁を取り除くことから始めなければなりません。ネットワーク エンジニアをいきなりソフトウェア開発者にすると宣言することは、基本的な障壁(時間とリソースの問題)を無視しています。既存の従業員をより高度な役割に転換することはとても困難な作業ですが、ブレイクスルーを目指す企業は、エンジニアがそれに追随できるよう支援するプログラムを作成する必要があります。
興味深いことに、この調査結果では、自動化により従業員の満足度が向上することが示されています。個人的なワークフローや満足度は、自動化した企業において向上しています。これは、従業員の満足度が優れたビジネス成果につながる限り、自動化により、自動化されたインフラストラクチャとインフラストラクチャがサポートするビジネスを超えて、見返りを得られる可能性が非常に高いことを示しています。
優れたネットワークから優れたネットワーキングへ
全体として、ネットワーク業界は変換点にあり、ここでは自動化が重要な役割を果たします。多くの企業が現状維持に重点を置き、そこからメリットを得る中、ジュニパーは、この変革フェーズを通して業界をサポートする必要性を感じています。当社の製品やサービスによって、自動化をネットワーク運用の重要な位置に据えようとしているお客様のニーズに応えるだけでなく、この変革においてネットワーク エンジニアをサポートする重要性も感じています。NRE Labs (オープンなソースで、ブラウザーで利用できるプラットフォームと、自動化教育をサポートするコミュニティ)などのリソースを通じて、ネットワーク エンジニアの必要なスキルを育成し、組織内での導入を推進し、最終的にビジネス機会を増やし、自動化が提供する価値を高められるように支援することを目指しています。
自動化のトレンドのより詳細な洞察については、 2019年度ネットワーク自動化の現状レポート(SoNAR)をダウンロードしてください。