今日の企業では、Wi-Fiのパフォーマンスとビジネスのパフォーマンスは密接に結び付いています。
接続が不安定になると生産性が低下するだけでなく、シームレスなWi-Fiエクスペリエンスの確保のためITネットワーク管理者の負担も増すことになります。ネットワークに接続するデバイスがかつてないほど増えている昨今、ネットワークパフォーマンスを明確に可視化して実用的なインサイトを得ることが、急激にビジネスクリティカルなニーズとなっています。
これまで、ネットワークパフォーマンスに関するインサイトは一方的なもので、AP(アクセスポイント)の側から限定的にネットワークを把握できるのみでした。APに接続されたクライアントの側から見た詳細なインサイトは、これまで提供されてきませんでした。Marvis® Clientの導入により、ジュニパーは、ユーザーのデバイスから直接ユーザーのWi-Fiエクスペリエンスを確認できるという、これまでにない可視性を提供できるようになりました。
Marvis Clientはネットワークの管理とトラブルシューティングを強化し、IT運用チームがネットワークパフォーマンスを事前対応で最適化します。このブログでは、必要なクライアント側のデータとツールをどのように利用できるのかを紹介いたします。Marvis ClientがMarvis VNA(仮想ネットワークアシスタント)とともに、どのようにして優れたユーザーエクスペリエンスを裏付ける詳細な可視化と迅速なトラブルシューティングを実現するのかを説明します。
クライアント側からのWi-Fiの把握
クライアントがネットワークをどのように認識しているかを把握することは、Wi-Fiネットワークにおいて常に大きな課題となってきました。接続の切断、データレートの低下、ローミングの問題などエンドユーザーから頻繁に問題が報告されますが、影響を受けたデバイスから得るインサイトが欠けているため、根本的原因を切り分けて診断することは困難でした。
Marvis Clientは、エンドユーザーのデバイス側からのWi-Fiエクスペリエンスを詳細に可視化することで、この問題を解決します。Android、Windows、macOS搭載のデバイスにMarvis Clientをインストールすると、IT管理者はデバイスのタイプ、オペレーティングシステム、無線ハードウェア、ファームウェア、接続情報などの豊富な情報を確認できます。Marvis ClientからJuniper Mist® Cloudに情報が渡され、Marvisがその情報を分析することで、実用的なインサイトが得られます。
例えば、デバイスに接続の問題が発生した場合、Marvis Clientは、問題が特定のドライバーバージョンによるものか、信号干渉によるものか、または無線ファームウェア構成が規格外であることによるものかを識別できます(図1参照)。このような詳細なインサイトにより、ネットワーク管理者はより迅速に問題を特定して解決できるようになり、MTTR(平均問題解決時間)の短縮につながります。
図1. Mistのダッシュボードに表示されたMarvis Client
Marvis VNAとの連携
Marvis Clientは、単独では機能しません。ジュニパーの画期的なAIネイティブアシスタントであるMarvis VNAと連携することでネットワークデータを分析し、問題を特定することでリアルタイムに解決策を提案します。AIネイティブ機能を介してMarvis VNAはネットワークデバイスとクライアントデバイスの両方から継続的にデータを取得し、ネットワーク環境の全体図を構築します。
Marvis ClientとMarvis VNAが連携することで、ジュニパーのAIネイティブネットワークのサポートモデルにおける重要な部分が完成します。これにより、IT運用チームはAPから接続クライアントに至るネットワークの全体像を把握し、高い精度で問題を診断して解決できるようになります。カバレッジのギャップの特定、クライアントによるAP間のローミングの方法の把握、デバイスの接続状況の視覚化など、Marvis Clientはネットワークで起きていることを明らかにして、ユーザーエクスペリエンスを最適化するデータドリブンの意思決定を可能にします。
エクスペリエンスの向上とコストの削減
Marvis Clientは、IT運用チームとユーザーにも同様に、以下のような多くのメリットをもたらします。
- デバイスからクラウドまでを可視化:Marvis Clientは、デバイスの詳細なプロパティを収集および表示し、クライアントの動作についてのインサイトを提供します。これによりIT運用チームは、デバイスがネットワークとどのようなやり取りをしているか、クライアント側からネットワークパフォーマンスがどのような状態なのかを把握できます。
- 事前対応の問題解決:Marvis VNAによりネットワークデータが継続的に監視されるため、チームは潜在的な問題が拡大する前に特定して解決できます。Marvis Clientから、根本的原因分析の精度を高めるデバイス固有のデータが提供されるため、MTTRを短縮しダウンタイムを最小限に抑えます。
- ユーザーエクスペリエンスの向上:デバイスのネットワーク接続方法、ローミング状況、エクスペリエンスを把握できるため、IT管理者はネットワークの設定を微調整して、ユーザーエクスペリエンスをさらに向上させることができます。特に、企業のオフィスや大規模なキャンパスなど、ハイモビリティ環境に有益です。
- コスト削減と運用効率:インサイトの自動化と事前対応のアクションにより、手動でのトラブルシューティングやオンサイトでのサポートの必要性が減り、コストを大幅に削減できます。Marvis VNAがIT運用チームの一員として機能するため、チームはネットワーク問題の解消ではなく、戦略的な取り組みに集中できるようになります。
Marvis Clientの動作:実際のユースケース
Marvis Clientがどのようにしてトラブルシューティングを効率化するのか、さらに理解を深めていただくため、実際の例をいくつかご紹介します。
Marvis Clientの影響を示す例として、次のシナリオを見てみましょう。ある病院では、看護師が患者のバイタルを患者管理システムに記録しようとすると、接続の問題が断続的に発生していました。看護師は接続の回復を待つか、もっと接続しやすい場所を探して移動するなどして貴重な時間を浪費していました。これまでは、IT運用チームは影響を受けたデバイスから記録を収集して手動で分析するなど、いくつかの手順を踏む必要がありました。このプロセスは労力と時間がかかるうえ、解決できないこともよくありました。
Marvis Clientを使用すると、IT管理者は問題がPCのタイプによるものか、ファームウェアバージョンによるものかを迅速に特定できます。例えば、影響を受けたデバイスはすべて古いドライバーバージョンを実行しており、そのためAPとの互換性に問題が発生していたことが、Marvisによって明らかになります。この知識を得てIT運用チームは、影響を受けたデバイスに対してアップデートをプッシュできます。これにより、看護スタッフの中断時間を最小限に抑えながら問題を解決できます。
次に、製造業の事例を見てみましょう。ある倉庫の出庫担当者は、Android搭載のハンドヘルド機器を使用していました。AP間でのローミングの際に、担当者は接続の切断やパフォーマンスの低下といった問題に遭遇していました。Marvis Clientでは、最適でない動作の原因を可視化できるため、ネットワーク管理者は設定を調整してAP間の送受信を円滑にすることができます。
最後に、中間試験中の高等教育機関の事例を見てみましょう。多数の生徒が一斉に試験を受けるため、無線ネットワークに大きな負荷がかかることがあります。
Marvis Clientを使用すると、学校のIT管理者は、Wi-Fiに接続しているすべての管理対象デバイスのテレメトリにリアルタイムでアクセスできます。この機能により、IT管理者はパフォーマンスを監視して、あらゆる潜在的な問題に事前に対応できます。さらに、教師から問題が報告された際には、管理者はデバイスの静的データと、RSSI(電波強度)やSNR(ノイズ比)などのリアルタイムのローミングメトリクスの両方をチェックし、これによってネットワークの品質を確保できます。
ネットワークの可視性とサポートの新たな標準
Marvis VNAやMist AIと連携したMarvis Clientは、ネットワークの可視性とサポートに関して新たな標準を打ち立てました。クライアント側から直接インサイトを得られるため、ネットワークのユーザーエクスペリエンスの状況や、問題をより効果的に解決する方法について、より詳細に把握できるようになります。
ネットワーク環境がますます複雑化するにつれて、優れたユーザーエクスペリエンスを維持するためには、Marvis Clientなどのソリューションが不可欠となります。AIネイティブの機能とクライアントレベルの可視性を活用することで、ネットワーク管理チームは事前対応で問題を特定して解決し、ネットワークパフォーマンスを最適化し、エンドユーザーに卓越したサービスを提供できます。
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