気持ちが晴れない方は、ぜひ新しいシリコンソリューションのプレスリリースに目を通してみてください。新しいASICs(特定用途向け集積回路)の大きな可能性が気持ちを明るくしてくれるはずです。しかし、CiscoやNokiaなどの最近の発表に目を通してみると、ある言葉が決して使われていないことにお気づきになるでしょう。それは「トレードオフ」です。これは嘆かわしいことです。というのも、優れたシリコン設計では、お客様になんらかのメリットをもたらすために、ときには他のメリットを犠牲にしてアーキテクチャを最適化するものだからです。シリコン設計で何に対して最適化しているのかを明確にしないベンダーは、全体像を示していないことになります。
ジュニパーネットワークスは、ネットワークの一部分を改善するために他の部分を妥協するようなことは、あってはならないと考えます。そのためジュニパーは長年にわたってマルチシリコン戦略を採用し、ネットワークの役割に応じて最適化されたさまざまなチップセットのプラットフォームを提供してきました。今日では、最新世代のジュニパーのTrioとExpress ASICsの発表でも、この戦略を継続しています。ネットワークがますます複雑になる中、10年以上にわたりお客様に対して貫いてきた基本理念にこだわり続けるのは賢明な選択に思われます。つまり、業務に適したツールを選択すればネットワークは最適に機能する、ということです。
特にネットワークシリコンでは、どのような設計でも、論理スケールとスループットを秤にかける必要があります。複数のディメンション全体で論理的規模を同時に拡大するには、メモリも増やす必要がありますが、1秒当たり数十テラビットのスループットに対応するようにメモリを増やすためには、同時に最適化も必要です。言い換えれば、多様で複雑なタスクに合わせて論理的拡大が可能な汎用性を提供する柔軟性の高いASICを設計するか、あるいは帯域幅中心の役割でスループットに特化したASICを設計する必要があります。しかし、1つの設計でこの両方を最適化することは不可能なのです。
多様化が専門化を推進
ネットワークはこの20年間、要求の厳しいさまざまなデジタルサービスに対応を広げることで進化してきました。通信事業者は特定の役割を実現するために、ますます専門的なシリコンを求めています。ハイレベルでは、ネットワークASICsを最適化するための2つの方法のいずれかが、適切なツールの選択になります。
- 柔軟性のある論理スケール:消費者向けブロードバンドを提供する高度に動的なマルチサービスエッジノード(BNG)や、業務用のVPN(仮想プライベートネットワーク)のユースケースでは、高い論理スケールと柔軟性が最も重要な要件です。ネットワークエッジでは、サービスの提供やユースケースごとに、プラットフォームが複雑な機能に対応する必要があります。たとえば、大規模なルート転送テーブル、柔軟なトンネルのカプセル化、高いQoS(サービス品質)、ファイアウォールセキュリティフィルターや、同じ高レベルの論理スケールで各サービスにトラフィック管理カウンターを付ける機能などです。これにより、エッジの役割に関する複雑なデータベース検索を大規模、高速、広範囲で実行できる、大容量のメモリサイズに対するニーズが高まります。同様に、ネットワークのアップタイムとカスタマーエクスペリエンスを向上すべく、ますます多くの事業者が、複雑な問題の迅速な関連付けと特定にML(機械学習)を活用するようになっています。マルチサービスエッジにおけるネイティブMLの高度な処理には、固有の機能が必要になります。
- 高いスループット:トランスポートアグリゲーションやコア用の転送ノードなど、ネットワークの他の部分では、そのスクリプトは反対になります。コアノードは、論理的な加入者やVPNを直接サポートしないため、同じように多様なネットワーク機能を維持する必要はありません。しかし、高まるスループットの需要に応えていくためには、大量のトラフィックを処理する必要があります。その結果、スループット、フィルタリング、テレメトリ、サンプリングなどの既知の運用に必要なパイプラインとメモリ特性で帯域幅のスループットと転送能力を上げるように、コアノードを最適化する必要があります。
究極的に、シリコン設計とは、論理スケールとスループットを正反対の変数とする多変数の方程式です。所定のダイサイズとパワーバジェット内で、最大の帯域幅スループットまたは論理スケールを得られるように最適化することはできますが、一方を低下させずにもう片方を高めることはできません。
この状況を考えると、一部のベンダーがなぜ最適化について語りたがらないのかは理解しがたいことです。ネットワークシリコンでの最適化機能が望まれるため、さまざまな帯域幅ポイントやサービススケールポイントで、特定のドメインのニーズに最適化されたプラットフォームを使用できます。ネットワークのさまざまな部分の多様な役割を最適化することによってのみ、エクスペリエンスファーストネットワーキングを実現できるのです。
お客様に選ばれる最新世代のジュニパーチップセット
長年にわたり、ジュニパーのシリコン戦略は、業務に最適なツールをお客様に提供すること、つまり、ネットワークのさまざまな役割に対してASICsの選択肢を提供することでした。ジュニパーでは、2009年のMXシリーズルーターの最初のTrioチップセットのリリース後に、早くもこの決定を行いました。Trioは業界初の完全にプログラム可能なネットワークASICとして、マルチサービスエッジに画期的なソリューションを提供しました。しかし、1種類のシリコンでお客様のさまざまなユースケースのすべてに対応できないことがすぐに判明しました。そのため、2012年、ジュニパーはネットワークコアやピアリングユースケースの広帯域アプリケーション向けに開発されたPTXシリーズプラットフォームのExpressラインASICsを発表しました。
ネットワークとASICsはそれ以降進化しましたが、選択肢は多い方が良いという初期の教訓は依然として有効です。ネットワークは、さまざまなタスクに最適化されたASICsを使用することで、より適切に運用できます。現在も、以下のような最新世代のジュニパーチップセットにこれを適用しています。
- Juniper Trio 6 – 未知の要件向け:このジュニパーの新しいチップセットは、業界最高水準の性能を誇るマルチサービスエッジのソリューションポートフォリオであり、マルチサービスのユースケースを最適化するために新規に構築された唯一のネットワークチップセットです。
- MXシリーズルーター向けの第6世代のTrioシリコンは、非常に複雑で動的なエッジサービスノードの論理的スケールとプログラマビリティを最大化します。
- このソリューションは、MX 10000製品ファミリーに6 Tのラインカードを提供します。
- ML対応のTrio 6シリコンは、IPSecをネイティブサポートし、ネイティブラインレートでMACsecも統合されています。
- Trio 6には7ナノメートルの加工テクノロジーが使用され、旧世代のチップセットより70%高い電力効率をもたらします。
- 他に類を見ない最先端のシリコンで、現在と未来の幅広いユースケースに対応できる柔軟性を備えています。
- さらに、今後数四半期は市場に出そうにない最近発表されたASICsと違い、Trio 6はすぐにご購入いただけます。
- Juniper Express 5:Juniper Express 5は、28.8 Tという業界最高のノンブロッキングスループットを1つのパッケージで提供します。ジュニパーのこの新しいExpress 5シリコンと比べて、Ciscoが最近発表したP100シリコンは19.2 Tbpsで、当然ながら33%低いスループットです。 Express 5は妥協のないシリコンで、PTX10Kシリーズプラットフォームのあらゆるハイスループットユースケース向けです。Express 5は2021年にテープアウトされ、近い将来に出荷されて入手可能になります。
- Express 5の28.8 Tというスループットは、固定フォームファクターで36*800 Gという低消費電力のポート基数を提供します。
- 7 nmテクノロジーで構築され、これまでのチップセットより45%高い電力効率を実現します。
- 現行世代のPTX EANTCテストの結果は、すべてのKPIをクリアしています。
さらに、これらの新しいASICsには、ネットワークのさまざまな部分で求められる論理スケールやスループットの非常に厳しい要件に最適化されたプラットフォームを導入できる柔軟性があります。競争で生き残るのは?最適化されていないグレーゾーンで、何にでも対応しようとして、結局は何者にもなれないのです。
ジュニパーは、柔軟性と選択肢に力を入れているため、業務に最適なツールをお客様に提供できます。他のベンダーと違い、ジュニパーは1つの選択が常に正しいという主張はしません。
「ネットワークサービスの需要は、拡大して多様化しています。ネットワークプラットフォームの設計とネットワークアーキテクチャも同様です。柔軟性や拡張性からスループットやパフォーマンスまで、1種類のチップセットだけですべてのニーズを常に満たすことはできません。そのため、ネットワーク内の特定のポイントの特定のニーズに最適なシリコンに特化して最適化するというジュニパーの計画は、理想的なお客様中心の戦略となるのです。通信事業者は、ジュニパーの一貫性のあるシリコンアーキテクチャによって将来に備えた投資をすることで、ネットワークの最新化を進めながらより大きな価値を実現できます」
– ACG Research、Ray Mota氏
将来に向けた構築
新しいシリコンの開発には巨額の投資が求められ、製品の出荷までに通常3~5年の研究開発期間を要します。そのため、ベンダーがそのコストを削減しようとするのは当然です。単一シリコンアーキテクチャでの標準化は有効ではありますが、お客様に妥協を強いることにもなります。これは、ベストケースのスループットに最適化し、IMIXトラフィックのRFC 2544テストで不合格になったCiscoの8201にも見られます(EANTCのテスト結果はこちら)。Nokiaのように、1つのチップセットに多くの役割を押し付け、スループットを犠牲にして論理スケールを推し進めることは、競争から何年も後れを取ることになるでしょう。Nokiaは最近、2022年にようやくスロット当たり14.4 Tを提供すると発表しました。一方ジュニパーは、すでに3年前から、そのスループットを実現する製品を出荷しています。200社以上のお客様に、14.4 Tのソリューションで数万もの400 Gポートを出荷してきました。Nokiaが最初の14.4 Tカードについて発表する前にです。そしてジュニパーの新しいExpress 5シリコンは、2019年に達成したスループットのさらに2倍になります。
あるいは、収支を度外視してお客様にとって最適なものを追求するシリコン戦略を構築することも考えられます。ジュニパーでは、選択肢と最適化の実現に投資してきたため、妥協は一切ありません。ジュニパーは以下のようなシリコンを提供します。
- 一貫性のあるアーキテクチャ:長期にわたる使用を想定して最適化されたシリコンアーキテクチャの製品ファミリーを選択した後で、ベンダーによる方針変換の憂き目に合うこと以上に、破壊的で高くつくことはありません。複数世代のチップセットにわたってパフォーマンスと拡張性が継続的に向上するメリットを得ながら、動作と運用で一貫性が維持される必要があります。これこそまさに、ジュニパーがこの13年以上にわたって実現してきたことです。当社のイノベーションサイクルは、1つの製品世代から次の世代へとスムーズに流れており、お客様はプラットフォームやツールの交換、スタッフの再教育などをせずに最新のラインカードに移行できます。
- 環境に優しい運用が可能:同様に、ベンダーはカーボンフットプリント削減のためにネットワークの見直しを迫られるべきではありません。ジュニパーのASICsを使用しているお客様の場合、ジュニパーの第一世代のTrioチップセット以来、電力効率が95%向上しています。
選択肢と柔軟性。業務に最適なシリコンを選択できること。これが、ジュニパーのシリコン戦略にある基本理念で、エクスペリエンスファーストネットワーキングを可能にする秘策です。競合他社はどうでしょうか。自社のシリコンを最適化するために選択したことについて、語りたくない理由があるのでしょうが、このくらいにしておきましょう。